堀江貴文氏は、「天美卵」という1個100円の卵を全国へと販売する傍ら、地域に根差した六次産業を推進する大江ノ郷自然牧場の社長・小原利一郎氏に、大江ノ郷自然牧場の名前が知れ渡るようになるまでの経緯や、複合施設「大江ノ郷ヴィレッジ」&閉校を活用した里山リゾートホテル「OOE VALLEY STAY」が高い人気を誇る理由について話を聞いた。
大江ノ郷自然牧場の「天美卵」が1個100円で売れる理由
堀江 大江ノ郷自然牧場のお客さんは、だいたい鳥取県内の人ですか?
小原 鳥取県とお隣の岡山県、それから兵庫県の3つのエリアの方が多いです。
堀江 へー。そんなに遠くから来るんですか?
小原 そうなんです。鳥取市内の人から見ると、すごく悪い立地なんですが、実は兵庫や岡山からは近いんですよ。高速道路を使うと姫路(兵庫県)から1時間30分くらいでここまで来れるんです。
堀江 (スマホで地図を見る)あ、本当だ。高速道路が近くにある。
小原 あとは鳥取砂丘に行く人たちの立ち寄り場所にもなっているみたいです。
堀江 なるほどね。岡山とか姫路から砂丘に行くときに通りかかるんだ。
小原 はい。だから、僕たちが知らないうちに岡山の人に名前が知られていてびっくりするみたいな感じでした。あ、パンケーキが来ましたよ。堀江さん、どうぞ召し上がってください。
堀江 (パンケーキが置かれる)これはおいしそうだなあ。メイプルシロップをかけて食べるんですね。いただきます。
小原 いかがですか?
堀江 ふわふわしてて、めちゃくちゃうまいですね。卵の味がすごい。そうか、卵がうまいんだ。メイプルシロップいらないですね。
小原 メイプルシロップなしでも、全然いけます。
堀江 これはリピーターの気持ちがわかるなぁ。本当にうまい。卵の味が濃い。
小原 大阪からくるリピーターの方もいるんです。ただ、週末になると2時間待ちとかになったりするので……。
堀江 2時間待ちになるんですか? 卵の生産は追いついているんですか?
小原 追いついてないです。
堀江 追いついてない(笑)。
小原 でも、もう鶏の数は増やしません。養鶏場を新しく作るのって、鳴き声や臭いの問題などがあったりして、すごくハードルが高いんですよ。ですから、卵を販売だけじゃなくて、卵を使ったスイーツなどを作って、卵にいろいろ付加価値を高めていこうとしているんです。
堀江 スーパーとかで売っている卵って、あまり値段が変わっていませんよね。あれは、どういう理由なんですか?
小原 簡単にいうと技術の進歩です。例えば、僕らのような自然の中での平飼いだと、この空間に1000羽ほどしか飼えません。でも、近代養鶏はこの空間を密閉して光を遮断して、空調を入れます。そして、ケージを高く積み上げて、同じ空間に10万羽とか飼うんです。餌も輸入飼料にアミノ酸などを合成したものを入れて使ったりします。ちなみに、うちは国産や天然の餌を食べさせているので高いです。飼育する人間も平飼いだとひとりで3000羽くらいしかみられませんが、近代養鶏だと10万羽みられる。面積に対するコストがすごく下がるんです。だから、10個入り1パックの卵でも200円で売れます。
堀江 なるほどね。それだけ手をかけているから、大江ノ郷自然牧場の「天美卵」は1個100円なんだ。まあ、それでも高くないと思いますけどね。
小原 そうなんですよ。卵って、平均するとひとりが食べるのが月に24個ほどなんです。
堀江 そうでしょうね。だったら、おいしいものを食べたほうがいいと。
小原 そうなんですよ。
小原利一郎(Riichiro Ohara)
「大江ノ郷自然牧場」社長。1965年生まれ。鳥取県出身。専門学校卒業後、県外の養鶏場で働くも、近代型養鶏に疑問を感じ、サラリーマンへ。その後、平飼い養鶏の夢を叶えるため、地元鳥取へと戻り、「大江ノ郷自然牧場」を創業。「天美卵」として一個100円の卵として全国へと販売する傍ら、地域に根差した六次産業を推進するとともに、自然循環型農業へ取り組む。
2009年、卵の専門店「ココガーデン」を開店。2016年に農と食のナチュラルリゾートをコンセプトとする複合施設「大江ノ郷ヴィレッジ」、2019年には閉校を活用した里山リゾートホテル「OOE VALLEY STAY」を開業。