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結石予防にもなる“腎臓の薬”とは?徳島大学・安部秀斉准教授が語る 腎臓病治療の最前線! その3】

堀江貴文氏は3月9日、徳島大学の安部秀斉准教授(現在は同大学を退職)を取材。腎臓病の専門医に最新研究などについて話を聞いた。腎臓結石の経験がある堀江氏。予防になる飲水の仕方とは?(初回配信:2020年3月7日)

意外と見過ごされている中性脂肪の恐怖!

堀江 なるほど。僕、1回腎臓結石になったことがあるんですが……。

安部 結石は繰り返すと危ないですね。堀江さん、今、水を飲んでるじゃないですか。水は結石予防に限らず、“腎臓の薬”なんですよ。

堀江 そうなんですか?

安部 糸球体はひとつの腎臓に約100万個あって、1日でトータル150〜170リットルの尿を作っているんです。だから、水分が足りなくなってくると途中の血管の血流が簡単に途絶えてしまう。それで、常時、流しておく必要があるんです。腎臓にとっては、ちょこちょこ水を飲み続けるのが一番いいんですよ。

堀江 なるほど。

安部 成人だと、だいたい1500mlが1日の飲水の目安なんですけど、腎機能が悪くなったりクレアチニンが上がってきた人には、それより多く飲んでもらうように指導しています(心不全などがない場合)。あと、意外と見過ごされているのが中性脂肪です。血糖値はみなさん気にしているけど、中性脂肪は尿酸とともにあまり注目されていない。血糖は食後1時間から1時間半をピークに下がっていくからいいんですけど、中性脂肪は4、5時間後にピークがくる。すると3食食べると起きている間はずっと高中性脂肪状態になってしまうんです。これも動脈硬化の大きな原因になります。

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堀江 僕、中性脂肪高いんですよ。

安部 食後ですか?

堀江 食前です。

安部 じゃあ、食後はもっと高いですね、中性脂肪の数値が上がる原因は、食べ過ぎや飲酒、甘いものの摂りすぎなどです。飲酒はアルコールが中性脂肪を分解するリパーゼの働きをブロックしてしまうため、中性脂肪が高い状態が長時間続いてしまうんです。

堀江 中性脂肪って、どういうものなんですか? 脂質系でよく聞くのは中性脂肪、LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロールなどですけど……。

安部 簡単にいうと、食物の脂質を小腸から吸収したカイロミクロン(リポタンパク質)は中性脂肪の塊です。他に肝臓でも中性脂肪は作られます。この2つが大きな供給源です。この中性脂肪をスムーズに分解してHDL(善玉)コレステロールにするわけです。しかし、スムーズに分解できないと中性脂肪を大量に抱え込んだLDL(悪玉)コレステロールが増えてくる。

堀江 はい。

安部 実は、LDL(悪玉)コレステロールとHDL(善玉)コレステロールの中間体のものなどがたくさんあるんです。ですから、non-HDLコレステロールをいかに減らすかということが大切になってくるんです。

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堀江 でも、non-HDLコレステロールは指標としては出ないですよね。

安部 計算すればわかりますよ。総コレステロールからHDL(善玉)コレステロールを引けばいいんです。

堀江 そっか。

安部 ですから、食後に中性脂肪が速やかに分解されれば、高い状態が続かずにHDL(善玉)コレステロールに移行される。しかし、分解が滞ると血中にLDL(悪玉)コレステロール以外にも中間型のものが増えてしまって、動脈硬化の原因になるんです。

堀江 肝脂肪も同じですか?

安部 同じです。

堀江 僕は甘いものをあんまり食べないので、やっぱり飲酒だよなぁ。たくさん飲めちゃうのが良くないんですよ。肝臓がよく働いてくれるので(笑)。

安部 良いことなのか、悪いことなのか(笑)。

その4に続く

安部秀斉 Hideharu Abe
徳島大学大学院医歯薬学研究部准教授(現在は同大学を退職)。1965年生まれ。京都大学医学部大学院博士課程修了後、京都大学医学部付属病院、静岡県立病院などを経て、徳島大学病院に。徳島大学病院では副科長、外来医長を務める。日本医療研究開発機構創薬booster研究代表者。透析のない街をめざす委員会(サイバー・ホスピタル)代表。