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「リスは起きて、まずやることは睡眠」【筑波大学・櫻井武教授が語る「人工冬眠」 その4】

堀江貴文氏は12月14日、筑波大学の櫻井武教授を取材。冬眠や宇宙旅行、救急救命などについて話を聞いた。冬眠状態と老化の関係性とは?(初回配信日:2021年1月1日)

夢は、脳の作業時に漏れてきたノイズ

堀江 さっき、リスは冬眠中にも10日に1回くらい起きるって言ってましたが、起きて何をしているんですか。

櫻井 リスが起きて、まずやることは睡眠ですね。

堀江 そうなんですか(笑)。

櫻井 冬眠中には睡眠ができないので。

堀江 睡眠中は体の中にどんなことが起こっているんですか。

櫻井 それが、まだ未解明なところが多いんですけど、おそらくシナプス(神経細胞間の情報伝達のための接触部分)の再構築です。ひとつひとつの神経細胞が処理できる情報は有限なので、そのままだと限界がきてしまいます。だから、たまった情報を減らさなければいけない。情報を入れる幅を作らなければいけないんですが、その幅を作っているのが睡眠だといわれているんです。

堀江 一度、外界から情報をシャットアウトして、シナプスの再構築をしている、と。

櫻井 それをやっているのが「ノンレム睡眠」です。

堀江 パソコンでいえばデフラグしているような状態ですか。

櫻井 そうですね。ですから、シナプスを再構築するには脳の機能が必要なんです。冬眠中は脳の機能が極端に下がってしまっているので、それができません。

堀江 睡眠中は脳は休んでいるわけではないんですね。

櫻井 そうですね。作業をしています。特にレム睡眠時は、覚醒時よりも代謝が上がっています。

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堀江 「レム睡眠」時は、主に何をやっているんですか。「レム睡眠」って、夢をいている時ですよね。

櫻井 そうです。「ノンレム睡眠」は、今、お話ししたようにシナプスの再構築で8割方あっていると思うんですが、「レム睡眠」のことは本当にわかっていなくて、たぶん感情の処理に関わっているんだと思います。

堀江 感情の処理?

櫻井 脳の記憶量は有限なので、必要な記憶を取捨選択しています。そして、重要な記憶はサムネイル化して、感情でタグ付けしてすぐに取り出せる階層に置いてあるはずなんです。だから「3日前の昼食のメニュー」はそんなに覚えていないけれども、「10年前に行った楽しいパーティ」のことは覚えている。それは感情でダグ付けされているからなんです。

堀江 だから、そういうことを夢でみると。

櫻井 夢は、僕らの考え方だと“ノイズ”です。前頭前野がオフになっているので、夢は認知されないのが普通です。しかし、脳が記憶を階層に置く作業をしている時に、たまたま目が覚めて認知してしまったとか。ですから、情報漏れで記憶に残ってしまったものが夢なんです。

堀江 そういうことか。面白いですね。今日は冬眠や睡眠のお話が聞けて、とても参考になりました。本当にありがとうございました。

櫻井 いえいえ。こちらこそ、ありがとうございました。

その1はこちら

櫻井武(Takeshi Sakurai)
1964年、東京生まれ。筑波大学医学医療系教授、筑波大学「国際統合睡眠医科学研究機構」副機構長。1998年、覚醒を制御するペプチド「オレキシン」を発見。2020年、冬眠様状態を誘導する新しい神経回路を同定。研究テーマは「覚醒や情動に関わる機能の解明」「睡眠・覚醒制御システムの機能的・構造的解明」など。