常駐義務を逆手に取れ。Leaneveが挑む“収益再配線モデル”の実像:Leaneveのコンセプト物件
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常駐義務を逆手に取れ。Leaneveが挑む“収益再配線モデル”の実像

インバウンド需要の回復とともに、都市部の宿泊需要は底堅さを見せている。一方で、宿泊施設の運営環境は年々制度的な制約が強まり、とりわけ無人運営を前提とした小規模宿泊施設にとっては参入障壁が上がり続けている。

東京都内ではすでに複数の区で旅館業許可取得におけるスタッフ常駐要件が求められており、さらに条例改正により同様の規制が広がる動きも見られる。制度の趣旨は、宿泊者対応や近隣トラブルへの迅速な対応など、安全面や地域共存の観点から理解できるものだ。一方で、常駐体制の確保は固定人件費の発生を意味し、小規模施設にとっては採算の壁になりやすい。

こうした中、「常駐=コスト」という前提そのものを問い直す試みが現れている。

東京都渋谷区で不動産企画・運営事業を展開する株式会社Leaneve(東京都渋谷区 代表取締役 大嶋宏行)は、小規模宿泊施設でも常駐体制を成立させる運営モデルの構築に取り組んでいる企業の一つである。

ZEROICHIではすでに同社の取り組みを取り上げ、「常駐義務を前提にした収益再設計」という構造的な仮説を提示した。本稿では、その後の取材内容を踏まえ、このモデルの背景、設計思想、そして成立条件を改めて整理する。

「常駐=コスト」という前提を崩せるか

前回の記事では、都市部で進む宿泊規制の中で、次のような構造的な歪みが生じている可能性を指摘した。

宿泊需要は存在するにもかかわらず、人的配置義務が強まるほど小規模プレイヤーの参入が難しくなるという構造である。

一般に、常駐体制を前提とした宿泊施設は一定以上の客室数がなければ採算が取りにくいとされる。結果として、好立地であっても小規模施設では宿泊用途としての活用が見送られるケースが生まれる。

需要があるのに供給が立ち上がらない。
この状況を生む原因の一つが、常駐スタッフの固定費構造である。

そこで浮かび上がるのが、「常駐=コスト」という前提を別の角度から見直す必要性である。

Leaneveの取り組みは、まさにこの部分に手を入れるものである。

取材で見えたLeaneveの本質:民泊会社ではなく「空間収益設計会社」

今回の取材で明らかになったのは、Leaneveが必ずしも民泊事業そのものを目的としているわけではないという点である。

Leaneveが掲げる事業コンセプトは「物件整形」と呼ばれる不動産活用手法であり、建築・運営・マーケティングを横断して空間の価値を再設計することにある。

小規模宿泊施設における収益再配備モデル図
図1:収益再配線モデル 常駐の“横断回収”という発想

同社にとって宿泊事業は、その一部の手段に過ぎない。
民泊や旅館業は、物件の可能性を引き出す入口の一つとして位置づけられている。

取材の中で大嶋氏は、宿泊・撮影・その他の用途を組み合わせながら空間の収益構造を再設計するという考え方を示している。言い換えれば、同社の事業は宿泊業というよりも「空間収益の再配線」に近い。

常駐の“横断回収”という発想

Leaneveのモデルの特徴は、常駐スタッフの存在を単純なコストとして扱わない点にある。

従来の宿泊施設では、フロント業務の待機時間は収益を生まない時間として扱われることが多い。しかし同社では、この時間を別の業務に組み合わせることで人件費を吸収する構造を模索している。

具体的には、

・宿泊施設のフロント業務
・IT関連業務など別の作業
・撮影利用などの運営補助

といった業務を同一人材が兼務することで、人的稼働を複数の収益源にまたがって活用する設計である。

これは単なるコスト削減ではなく、人的稼働を複数の用途に分配する「ポートフォリオ設計」とも言える発想である。

図2:Leaneveモデル図解
図2:Leaneveモデル図解

創業者の実験的アプローチ

大嶋宏行氏

この設計思想の背景には、創業者自身の経験がある。

大嶋氏は過去にアドレスホッパーとして複数の宿泊施設やシェアハウスを利用しながら生活した経験を持ち、その中で不動産の使われ方を利用者視点と提供者視点の両方から観察してきたという。

また、自宅を撮影スペースとして貸し出した経験から、宿泊用途以外でも空間が収益を生む可能性を実感したことが現在の事業発想につながっている。

こうした実験的な取り組みを積み重ねた結果、宿泊・撮影・作業スペースなど複数用途を組み合わせる発想が形成されていったと考えられる。

構造合理性の検証

もっとも、このモデルが実務としてどこまで成立するのかは別の問題である。

収益再設計のアイデアは魅力的である一方で、成立には複数の条件が必要になる。

成立条件

このモデルが機能するためには、少なくとも以下の条件が求められる。

・一定の宿泊稼働率
・適切な客室単価
・兼務可能な人材の確保
・デバッグ案件などの業務供給の安定

これらが同時に成立することで、常駐スタッフのコストが複数の収益源で吸収される構造が成立する。

スケールの壁

取材の中で大嶋氏は、このモデルの最適規模についても言及している。

同氏の見解では、現時点ではおおよそ20室程度までが運用上のバランスが取りやすい規模であり、それ以上になる場合は一般的なホテル運営に近い体制へ移行する可能性があるという。

この点は、モデルのスケーラビリティを考える上で重要な論点である。

外部依存構造

さらに、宿泊事業以外の収益源も外部環境に影響される可能性がある。

例えば、

・OTA(オンライン予約サイト)
・撮影需要
・デバッグ案件

などは市場状況によって変動する。

そのため、このモデルは複数収益によってリスクを分散する構造を持ちながらも、一定の外部依存性を抱えているとも言える。

思想は一段上、工業化は途上

以上の点を踏まえると、Leaneveの取り組みは次のように整理できる。

評価項目現状
問題設定高い
設計思想明確
実証性検証段階
再現性途上
スケール性未確定

つまり、同社のアプローチは問題設定と思想面では先行している一方で、運用モデルとしての工業化はこれからの段階にあると見ることもできる。

規制産業の再設計モデルになり得るか

Leaneveの試みは宿泊業に限らない可能性も持つ。

規制産業ではしばしば、

・人的配置義務
・設備要件
・許認可条件

といったコスト要因が参入障壁になる。

その場合、多くの企業はコスト削減や規制回避を試みるが、同社のアプローチは異なる。

規制条件を前提にした上で、収益構造そのものを再設計するという発想である。

このアプローチは、他の分野でも応用される可能性がある。

会社概要

社名:株式会社Leaneve(リーネフ)
住所:東京都渋谷区円山町5番5号 Navi渋谷Ⅴ 3階
代表者:大嶋宏行
設立:2016年12月
URL:https://leaneve.co/

ZEROICHI編集部の注目点

ZEROICHI編集部が本件に注目した理由は、民泊規制の是非ではない。

本質は、次の構造にある。

需要が存在するにもかかわらず、制度条件によって供給が成立しにくい領域。

こうした領域では、多くの場合、「参入しない」という選択が増えていく。

しかしLeaneveの取り組みは、その構造的ボトルネックに対して設計で突破を試みている点に特徴がある。

常駐義務を回避するのではなく、常駐という条件を前提に収益構造を組み替える。
この発想は、規制産業における新しいアプローチとして注視に値する。

これは完成形か、それとも始まりか

現時点で、Leaneveのモデルは完成されたビジネスモデルというよりも、検証を続けながら進化している段階にある。

ただし、問題設定は明確であり、方向性も一貫している。

常駐義務をコストとして受け止めるのか。
それとも収益構造の一部として組み込むのか。

この問いは、小規模宿泊施設の将来を考える上で今後も重要なテーマになり続けるだろう。

Leaneveの試みは、その問いに対する一つの実験として注視する価値がある。

■原文リリース(参照)

原文リリース発表日付:2026年2月18日
タイトル:無人民泊規制エリアの“駆け込み寺”に。「常駐=コスト」という民泊の常識を、収益設計から組み替える民泊運営を開始
原文リリースのURL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000152376.html

■過去掲載(参照)

ZEROICHI記事掲載日付:2026年2月26日
タイトル:無人民泊はどこまで続くのか。常駐義務化の波に対し、Leaneveが示した“小規模成立モデル”
記事のURL:https://zeroichi.media/local/38175