堀江貴文氏は3月7日、徳島大学の安部秀斉准教授(現在は同大学を退職)を取材。腎臓病の専門医に最新研究などについて話を聞いた。腎臓病の患者が減らない理由とは?(初回配信:2020年3月7日)
腎臓の知識が乏しい健診医が多い!
堀江 でも、自分のネフロンが壊れていることを知らない人は多いですよね。
安部 多いでしょうね。
堀江 すると、透析まっしぐらですよね。
安部 そうです。だから、患者さんが減らないんです。それに、医師(腎臓専門医以外)や医学生に「腎臓病は何で悪化すると思う?」と聞くと「糖尿病」と答える人が多いんです。でも、実は糖尿病は少数派で、他の生活習慣病の方が影響が大きい。そっちをちゃんとやらないと良くならないんです。ですから、食事や生活習慣をしっかりコントロールすることが大事なんです。
堀江 そうですよね。
安部 一方で、「悪くなったらもうダメなのか?」というとそうでもありません。糖尿病性腎症には3大合併症があって、学生は「しめじ」と覚えるんですが、「神経」「目」「腎臓」の3つです。神経障害や網膜症は、ほぼ100%起こりますが、腎症は40年、50年経っても起きないことがある。
堀江 へー。
安部 これは、たぶん“ポドサイド”という糸球体の外側にある細胞が、腎臓を保護する機能が残っているからです。ですから、ポドサイドの機能が低下していることが尿中のマーカーなどでわかれば、そのダメージを取ってあげる。すると、腎臓は長い間機能するので、透析の必要がなくなるんじゃないかと思っています。
堀江 ポドサイトですか。
安部 はい。ポドサイドが尿中に脱落してしまうと糸求体が壊れてしまうので、今は脱落や細胞死を迎える前にポドサイドの機能低下が検出できるマーカーを作っているところです。それができると治療薬も見つかるはずなんです。ですから、今はとにかく“見える化”を進めているところです。
堀江 なんで、これまで見える化の動きがなかったんですか?
安部 やはり、腎臓内科って人気がないんですよ。そのため腎臓の知識が乏しいドクターが多いからです。ひどい場合は、検診で毎年、尿タンパクが出ているのに「経過を見ましょう」と言ったりする。
堀江 そうなんですか?
安部 そうなんです。健診医がきちんとした知識を持ち合わせていない。だから、次のアクションを示せないので経過を見ましょうと簡単に言う。確かに、自覚症状もないし、2、3年じゃわからないです。でも、それが良くないんです。そこを変えなくてはいけない。確かに健診だと絶飲食で行うので、濃縮尿になるため偽陽性で引っかかることもあります。ですが、尿タンパク定量と尿中のクレアチニン定量を比べればわかるんです。尿潜血に関しても、赤血球の数だけではなくて、赤血球の形で原因がわかったりしますから。
安部秀斉 Hideharu Abe
徳島大学大学院医歯薬学研究部准教授(現在は同大学を退職)。1965年生まれ。京都大学医学部大学院博士課程修了後、京都大学医学部付属病院、静岡県立病院などを経て、徳島大学病院に。徳島大学病院では副科長、外来医長を務める。日本医療研究開発機構創薬booster研究代表者。透析のない街をめざす委員会(サイバー・ホスピタル)代表。