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「アルファ線で進行がんを抑える」 【東大・児玉龍彦教授が語る、がん治療最前線 その1】

堀江貴文氏は11月22日、東大の児玉龍彦氏を取材。「がん治療」の最前線などについて話を聞いた。(初回配信日:2016年11月22日)

治療後に出てくるがんは、抵抗性があり悪性度が高くなる

堀江貴文(以下、堀江) 素朴な質問なんですが、がん細胞ってすごいスピードで増殖するじゃないですか? あれは何でですか?

児玉龍彦(以下、児玉)普通、細胞は分裂・増殖に関して、非常に厳密なレギュレーションがあるんです。しかし、がん細胞はそのレギュレーションが外れてしまっている。だから、必要以上に分裂して、どんどん増えていってしまうんです。

堀江 ああ。

児玉 がん治療というのは低酸素や低栄養にして、兵糧攻めにするのが基本なんです。進行がんは兵糧攻めをうけると小さくなって、分裂しない状態になって、一見、治療が効いたように見える。しかし、そこに一度、変異が起こると、違うところに転移したり周りの細胞をどんどん食い破っていってしまうようになる。

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堀江 そうなんですか。

児玉 がんって、要するに2つのパターンがあって、初期のがんはただ増えるだけ。だから治療しやすい。しかし、初期の治療後に出てくるがんは抵抗性があるため、悪性度の高いがんになる。

堀江 初期の段階で根絶しないとヤバイっていうことですよね。例えば、大腸がんとか胃がんなどで、表皮のところに留まっているようながんは、一度、完全に取れるんですよね。

児玉 いや、ところがですね。大腸がんは手術後の時点では、完全に取り切れたかどうかまだわからないんです。初期のがんでも、手術後、半年から1年で再発や転移があったりする。非常に治療が難しい。だから、がんの治療というのは一度で根治というより、ロードマップのように計画的な治療をしたほうがいいと思います。

堀江 がんになった人は、最終的にどうなって死ぬんですか?

児玉 例えば、肝転移してだんだんと肝不全になったり、肺転移して次第に呼吸不全になったりします。それから、腹水や胸水が出てきて……。

堀江 脱水症状になっちゃう。

児玉 はい。水が溜まって肺炎とか。

堀江 腹水ってなんで溜まるんですか?

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児玉 原因はひとつではないんです。リンパから出てくるものもあれば、肝臓から出てくるものもある。それから腹膜が持っているバリア機能が壊れれば、どんどん水が溜まっていきます。結局、がん細胞によって炎症が起きて、どんどん染み出してくることが大きいと思います。

堀江 そうか。

児玉 人間って、結局、なんらかの臓器不全か、呼吸不全や心停止、あとはたまに脳死で死ぬわけです。がんで死ぬということは、どこかの臓器が破綻するということです。

その2に続く

児玉龍彦 Tatsuhiko Kodama

東京大学先端科学技術センター教授/東京大学アイソトープ総合センター・センター長(当時)。1953年生まれ。東京都出身。東京大学医学部卒業後、東大病院に医師として勤務。マサチューセッツ工科大学研究員を経て、1996年に東大先端科学技術センター教授に