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人工ミニ臓器「オルガノイド」で潰瘍が治る?【東京医科歯科大学教授岡本氏、水谷氏 その3】

オルガノイドの腸上皮移植による単回完結型補充療法の開発を行った東京医科歯科大学消化器病分野教授の岡本隆一と、ヒト大腸幹細胞培養技術の確立の研究を行った水谷知裕。
堀江氏はオルガノイドを使った難病治療に成功した岡本氏と、幹細胞治療の研究を行っている水谷氏に、治療の全貌を聞いた。

特定の細胞の入れ替えは可能か

堀江 幹細胞って、結局、幹細胞自体も増殖しているんですか?

岡本 はい。自分も増殖することで幹細胞を増やしたり、幹細胞の次に分化する細胞を増やしたりしています。

堀江 それはマスターの幹細胞もコピーしているということですか?

水谷 そうです。幹細胞は分裂して2つの幹細胞になるパターンと、ひとつは幹細胞、もうひとつは他の働く細胞になるパターンがあります。そして、腸の隠窩というヘコミの底にはだいたい14個くらいの幹細胞があると言われていて、その14個入る領域にいる幹細胞はそのまま幹細胞でい続ける。しかし、その領域から離れると、例えば粘液を出す細胞、抗菌物質を出す細胞などに分かれるんです。

堀江 へー。

水谷 腸はそのようにはっきりわかっていて、ターンオーバーが早いので、研究が進んできました。一方で、腎臓や肝臓は腸のような早い動きがないので、なかなか研究が進んでいないんです。肝臓に関しては、まだ腸のような幹細胞のマーカーも見つけられていないんですよ。

堀江 肝臓の幹細胞は、まだ特定されていないんですね。

水谷 あと議論があるのは、肝臓の幹細胞は肝臓だけになるのか。それとも肝臓の細胞と胆管の細胞を作ってくれるのか。そこもまだわかっていません。そこがわからないとiPS細胞で肝臓の細胞を作ることも難しいんです。ゴールが確定していませんから。

堀江 だったら、体性幹細胞を使った方がいいってことですね。

水谷 それができればいいんですけど、例えば脳や心臓などは患者さんから取ってくるのが難しいですよね。

堀江 確かに。

水谷 私たちが研究している腸だと内視鏡ですぐに細胞を取れるので、すごくやりやすいんです。

堀江 だから、研究が進みやすいんだ。オルガノイド(ミニ臓器)の移植手術は、実際に行なわれたんですよね?

岡本 はい。今、二例目まで進んでいます。

堀江 移植するとき、実際にはどうやっているんですか?

水谷 内視鏡の中にチューブを通せるので、チューブを使ってオルガノイド(ミニ臓器)を先端から潰瘍に吹きかけます。

堀江 スプレーみたいに?

水谷 はい。ただ、腸にも重量方向があるので、潰瘍があるところを下にくるように患者さんを動かして、内視鏡を見ながらシューと吹きかける。そして、そこに生分解性のあるシートを上から貼ってあげて、オルガノイド(ミニ臓器)が動かないようにします。

堀江 なるほど。めっちゃアナログですね。でも、それで治るんならいいですよね。うまくいっているんですか?

岡本 評価中です。

水谷 結局、オルガノイド(ミニ臓器)で潰瘍が治ったのかどうかの評価をするのが難しいので、今は観察期間というところです。

岡本 この方法だと処置にあまり時間はかからないし、今は入院してもらっていますが、今後は入院が必要なくなる可能性もあります。そうすると患者さんの負担はかなり少なくなります。残る問題は、やはりオルガノイド(ミニ臓器)の作り方ですね。現在は、コストも時間も人手もかかっていますから。

堀江 そうですよね。

岡本 ただ、培養がもっと手軽に低コストでできるようになれば、使い道は他にもいろいろと出てくると思います。また、遺伝子改変を加えられるようになれば、遺伝的要素の大きな病気などにも利用できるかもしれません。

堀江 確かに。その因子を取り除いたものを入れればいいわけですもんね。

岡本 畳の張り替えじゃないですけれども、自分の腸の上皮を敷き直して、病気になりにくい上皮に全部置き換えちゃうことができるかもしれません。

堀江 それができたら最高ですね。

水谷 潰瘍性大腸炎は原因が不明な部分がまだ多いのですが、遺伝子変異がはっきりしているような病気であれば、自分の細胞だけれども悪い遺伝子だけを治したものと入れ替えることができるんじゃないかとも思っています。

堀江 いやー、今回は本当に勉強になりました。頑張ってください。ありがとうございました。

岡本&水谷 こちらこそ、ありがとうございました。

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岡本隆一 (Ryuichi Okamoto)
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 消化器病態学分野 教授
1972年生まれ。東京都出身。医学博士。1996年、東京医科歯科大学卒業。2004年、東京医科歯科大学博士課程終了。その後、東京医科歯科大学准教授、特任教授などを経て現職に。

水谷知裕 (Tomohiro Mizutani)
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 消化器病態学分野 講師
1980年生まれ。三重県出身。医学博士。2005年、東京医科歯科大学卒業。2012年、東京医科歯科大学博士課程修了。その後、東京医科歯科大学助教などを経て現職に。