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「 集積回路と一緒に 開発したのが良かった」【東工大・益一哉教授が語る MEMS(微小機械)の進化とは?その2】

堀江貴文氏は6月21日、東工大の益一哉氏を取材。「MEMS(微小機械)」の進化などについて話を聞いた。(初回配信日:2016年6月21日)

素材を変えることで高感度の加速度センサーができた

堀江 ちなみに、 メムス(MEMS/Micro Electro Mechanical Systems=微小電気機械システム) の加速度センサーは最初の頃、どんなものに使われていたんですか?

 「メムスを作ろう」という流れになったのは1980年代です。そして、広く使われ始めたのは90年代。車のエアバッグです。ドーンとぶつかった時の加速度を測るためです。そして、次に広まったのは2006年に発売された「Wiiリモコン」ですね。

堀江 ああ、やっぱり。

 加速度センサーやジャイロスコープのようなメムスは、その名の通り“微小な機械部品”のことです。でも、単に「機械を小さくしただけ」で今のように広まったわけではありません。集積回路と一緒に開発したから良かったんです。

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堀江 というと?

 集積回路の微細化というのはご存知ですか?

堀江 はい。

 集積回路は同じ機能のものを小さく作ると処理速度が早くなる。性能が良くなるんです。しかも、小さいとシリコンチップの面積が小さくなるので、値段も安くなる。

堀江 要は、高純度シリコンは作るのにコストがものすごくかかるから、小さいと安くなるということですね。

 ええ。普通は「性能が良くなると値段は高くなる」けれど、集積回路は微細化して「性能が良くなると安くなる」。すると、単に機械を小さくするという考え方じゃなくて、シリコンや集積回路と一緒に微小機械を作ろうという方向に研究が進み始めたんです。

堀江 そうだったんですね。

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 実は加速度センサーって、集積回路のチップにオモリが乗っていて、そのオモリがバネにつられてビュンビュン動くだけなんです。基本はキャパシタンス(静電容量)の変化を読み取っているだけです。ここに1994年のあるメーカーの加速度センサーの写真があるんですけど……。

堀江 (写真を見る)これ、実物はどのくらいの大きさなんですか?

 ええと、10.8平方mmだから、3mm〜4mm角ですね。そして、これが96年。さらに2001年、2006年と集積回路の部分はどんどん小さくなっていきますが、オモリの大きさは変わってませんよね。だから、全体のサイズは小さくなっていない。

堀江 本当だ。なぜですか?

その3に続く

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Photograph/Edit=柚木大介 Text=村上隆保

益一哉 Kazuya Masu

東京工業大学・科学技術創成研究院院長 (当時) 。1982年、東京工業大学理工学研究科博士課程修了後、東北大学助手、助教授を経て、2000年に東京工業大学教授に。2016年から現職。