bodyタグ直後
WITH

「 集積回路と一緒に 開発したのが良かった」【東工大・益一哉教授が語る MEMS(微小機械)の進化とは?その3】

堀江貴文氏は6月21日、東工大の益一哉氏を取材。「MEMS(微小機械)」の進化などについて話を聞いた。(初回配信日:2016年7月19日)

これからは「この技術とこの技術を組み合わせたら、こういうことができる」と発想できる人が必要

堀江 僕はロケットを作っているので、 メムス(MEMS/Micro Electro Mechanical Systems=微小電気機械システム) の加速度センサーとかジャイロスコープの恩恵をものすごく受けているんですよ。

益 ああ。ロケットのイオンエンジンのコントロールには非常に微小な加速度制御が必要ですからね。そういうところにはメムスの高感度センサーなどが役に立ちますよね。

堀江 そうですね。小惑星探査機の「はやぶさ」は、太陽風のコントロールのためにジャイロスコープを使ったりしてます。実は宇宙だと加速度センサーより、高性能なジャイロスコープの方が重要だったりするんですよ。

 でも、ジャイロスコープは加速度センサーより電力を多く消費しますよ。そこで「加速度センサーにジャイロ機能を持たせることができるんじゃないか」という話が研究の場では出ているんですが……。

堀江 いや、ロケットの場合は電力を多く使うことはそれほど問題じゃないんです。発射後の5分〜10分ほどもてばいいので(笑)。

 あ、そうなんですか。

堀江 ええ。あと、ジャイロスコープも昔は「リングレーザージャイロ」くらいしかなくて、それは潜水艦や宇宙船くらいにしか使わないから、めちゃくちゃ高かったんですよ。1個あたり何百万円もしてました。それが、今はメムスの高性能ジャイロスコープが出てきて、価格も安くなった。5万〜10万円くらい出せば、リングレーザージャイロに近い性能のものが買えます。おかげでロケット開発の低価格化にものすごく役立ってるんですよね。

DSC_8931

益 そういう話を聞くと嬉しいですね。

堀江 僕はメムスって、ひとつの大きな流れになると思ってるんです。だから、加速度センサーやジャイロスコープだけじゃなくて、「こんなものを微小装置にしてどうするの?」みたいな研究もやってほしいんです。

益 はい。

堀江 そして、「こんなところにこんな技術があって、別のこの技術とつなげると面白いことができるよ」っていう“技術のキュレーションをする人”を見つけ出したい。

 技術のキュレーション?

堀江 例えば、音楽業界っていち早くデジタル化が進んで、一番イノベイティブな分野なんですよ。そこで、今一番稼いでいるのは誰かというと、DJです。年収が50億円の人もいますから。

 本当ですか⁉︎ すごいですね。

堀江 世界のトップDJはすごい音楽オタクで、自分のパソコンに1億曲とか入れてたりします。音楽の知識がものすごいんですよ。だから、「今、どんな音楽が流行っているのか」とか「今の音楽シーンはどういう流れなのか」などを誰よりも知っている。すると、逆に「こういう曲を作れば売れるよ」ということがわかってくるので、そういった情報を製作者にフィードバックして共同で曲を作ったりしているんです。

DSC_8944

 なるほど。

堀江 だから、技術界のDJみたいな人が出てくるといいなと思っているんです。

 堀江さんは、そういう立場じゃないんですか?

堀江 いや、僕は新しい技術が何に使えるかを想像することは、全然できないんです。でも、世間に広めることはできる。「こんな技術があるよ。何か面白いことに使えない?」って。そうすると誰かが「面白いね! それ、こんなことにつかえなるかも?」っていうアイデアが、SNSなどにダダダダーッって送られてくる。おそらくドローンだって、作られたきっかけはそういう感じだったと思うんですよ。「ラジコンヘリって操縦が難しいけど、ヘリにメムスのジャイロセンサーを3台積めば、勝手に自動制御してくれるんじゃね?」って。そうやって生まれたドローンがビッグビジネスを生むし、すごく普及していろんなことに使われていく。なぜ、この連載をやっているかというと、そういう意図があるんです。

 なるほど。僕らのように技術の研究だけをやっていると、そういう広がりの部分まではなかなか考えませんからね。でも、とても重要なことですよね。

堀江 技術のPRはとっても大事ですよ。そして、これからは、「この技術とこの技術を組み合わせたら、こういうことができるよね」っていう、スティーブ・ジョブズ的な発想を持てる人が増えてくるだろうし、そういう人たちが稼ぐようになると思います。

その4に続く

益一哉 Kazuya Masu

東京工業大学・科学技術創成研究院院長 (当時) 。1982年、東京工業大学理工学研究科博士課程修了後、東北大学助手、助教授を経て、2000年に東京工業大学教授に。2016年から現職。