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脳梗塞・不整脈の早期発見を目的とした データ収集アプリを開発。 【慶大・木村特任助教が語る ヘルスケア・アプリの未来とは? その2】

堀江貴文氏は5月25日、慶應義塾大学の木村雄弘氏を取材。「ヘルスケア・アプリ」の未来などについて話を聞いた。(初回配信日:2016年5月25日)

臨床研究用なので自分へのフィードバックはない

堀江 なんだか、すごい時代になったなあ。こうやってビッグデータを取ってるんだ。めちゃくちゃ手軽ですよね。

木村 そうですね。最初の5日で7000人以上ものデータを集められたことを米国不整脈学会で発表してきました

堀江 へえー。

木村 従来の方法ですと、これだけのデータを集めるには時間もマンパワーも膨大にかかります。仮に自分の勤務している病院で、たった100人分のデータを集めるとしても、相当大変です。

堀江 そうでしょうね。

木村 多くの施設で多くの患者の方からデータをいただくほど、誤差がどんどんなくなって情報の質が高くなるので、iPhoneを使う今回の方法は全国からデータが集まりますし、情報収集の手段としてはすごく良い方法だと思っています。

堀江 そのデータは、アップル社は介してないんですか?

木村 介していません。直接我々の管理するデータサーバに送られてきます。

堀江 これまでもインターネットを通じて問診をすることはあったと思うけど、こういうのはもっと増えたほうが良いですね。

木村 そうですね。

堀江 これ、自分にデータのフィードバックはあるんですか?

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木村 残念ながら、現時点ではありません。

堀江 なぜですか?

木村 今、我々がやっているのは臨床研究のためのデータ収集です。臨床研究では個人を特定できないように情報を匿名にします。ですから、アプリを通して皆さんからデータをいただいただいた時点で、それが誰のデータなのかわからないようにしなければなりません。そうなるとフィードバックなどのサービスをすることができないんです。

堀江 なるほど。

木村 そこが臨床研究とヘルスケアサービスとの違いだと思います。

堀江 「臨床研究とはそういうものだ」っていう話ですね。

木村 はい。でも、ずっと臨床研究だけでは、「何だ! ただデータを取られただけじゃないか」となってしまって当然なので、今後は何か情報を還元していきたいと思っています。フィードバックする情報の種類によっては薬事法なども関連してきます。

堀江 もっと細かいことも調べられるんですか?

木村 できます。ただ、やり方を工夫しないと、質問の数だけがものすごく増えて、面倒くさいだけのアプリと思われてしまうかもしれませんね。(笑)

その3に続く

Photograph/Edit=柚木大介 Text=村上隆保

木村雄弘(Takehiro Kimura)

医学博士、慶應義塾大学医学部循環器内科特任助教 (当時) 。1978年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学病院勤務