10年以上にわたり胃がん予防を研究し、日本ヘリコバクター学会の幹事でもある認定医・間部克裕医師と堀江貴文の対談(後編)をお届けします。
(文章・聞き手= 塩谷舞/ 初回配信日:2016年4月25日)
共存できる細菌と、共存しない方がいい細菌がある
間部:ピロリ菌以外の話をすると、身体の中の細菌を除菌することで清潔になりすぎちゃって、アレルギー的な疾患が増えるんですよね。花粉症だったり、喘息だったり、そういうものが増えてしまう。だから、おとなしい感染症はそのまま置いておいて、菌と共存しましょう、という意見があるのはごもっともなんです。
堀江:うんうん。
間部:でもこれ、少なくとも日本人や韓国人の胃の中にいるピロリ菌には、全く当てはまらない話です。しかもピロリ菌がいる本人が胃がんを発症しなくても、感染症ですからね。他の人に感染させてしまって、その方が胃がんになるという最悪のパターンもあるわけです。
堀江:それは止めたいですね。
間部:でもまぁこうして、ピロリ菌を悪玉だ!ピロリ菌が全部悪い!ということを伝えていると「ピロリ菌を抗生物質で除菌したし、安心だ!」と思ってしまう人がいる。これも危険なんです。
堀江:というと?
間部:胃カメラって、みんなちょっと敬遠するでしょう。気持ちが悪いし。ピロリ菌の除菌薬を飲んだ方々は、「もう大丈夫だから」と、健康診断なんかで胃カメラを断る場合がある。医者によっては「胃カメラは飲まなくてもいいですよ」と言っちゃう人もいますしね。だから、結果として胃がんができていたことに気づくことが遅れて、亡くなってしまう方もいらっしゃいました。ご遺族は「除菌したはずなのに……」と悔やまれるけど、除菌は100%ではないですからね。ですから胃がんになっていないかどうか調べるために、定期的な胃カメラが必要です。
堀江:なるほど、なかなか安心はできないですね。でもこれを読んでいる方々は、まずは簡易検査をしてもらって、そこで陽性であれば次のステップに行く、ということですね。
間部:もちろんです。 100%防ぐことは難しいですが、30~40%は予防できることがわかっています。自分の周りのためにも、ピロリ菌の検査と除菌はぜひ行っていただきたいです。
——間部先生と堀江さんの対談はいかがでしたか? 「知らなかった」という方はぜひ前編とあわせて、ご家族や会社の方々に教えてあげてください。
「既に知っていた」という方も、この事実は想像以上に認知度が低いもの。ぜひ一人でも多くの胃がんで命を亡くしてしまう方々を減らすために、認知向上にご協力ください。
胃がんの原因の99%はピロリ菌なわけですから、 みなさんで検査をして胃がんを予防しましょう。
間部 克裕 KATSUHIRO MABE
日本ヘリコバクター学会幹事、認定医、日本消化器内視鏡学会学術評議員、専門医、指導医、日本消化器病学会専門医、日本消化管学会専門医、指導医、日本消化器がん検診学会認定医、日本内科学会認定医