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「将来的には人工冬眠で宇宙旅行も可能に」 【理研・辻孝が語る「再生医療」の最先端!その4】

堀江貴文氏は8月10日、理化学研究所の辻孝氏を取材。「再生医療」の最先端などについて話を聞いた。(初回配信日:2015年8月14日)

「人工冬眠」は臓器再生技術の延長上に

堀江 人間で冬眠に関する研究はされてないんですか?

 人間ではやってないですね。だから私たちは今後、動物を使って「温度域と生存」を考えながら冬眠の研究をやろうと思っています。そのひとつが「臓器を維持する温度域」なんです。それで22度という温度に注目したんです。

堀江 なるほど。では、臓器再生のもうひとつのポイントは何ですか?

 それは、臓器灌流培養システムの酸素運搬台で赤血球を使ったことです。

堀江 赤血球?

 ふつうは、培養液の中に溶存酸素を入れます。しかし、酸素を溶かせば溶かすほど酸化障害が起きる。フリーの酸素がいっぱいになってしまう。

堀江 フリーラジカルになる?

辻 そうです。実は、僕らの体はフリーラジカルが起こらないように赤血球が酸素を固定化して、酸素濃度の低いところなど必要な場所で出すようにしている。だから酸化障害が起きない。それで赤血球を作ったんです。体の中の仕組みを利用したものです。

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堀江 そうか。赤血球は血液型があっていれば何でもいいのか……。

辻 そうです。それで、私たちが作った臓器灌流培養システムは、普通だったら12時間しか保たない動物の臓器を24時間も保たせることができた。あるいは、さっきお話したように心停止後90分経った臓器を臓器灌流培養システムの中に入れるとエネルギーを回復して元気になった。そして、その臓器を移植することができたんです。

堀江 すみません。なんか、そのシステムのことよりも「人工冬眠」のほうに頭がいっちゃってるんですけど……。

 ははははは。いいですよ。

堀江 あれは人間にも応用できますよね。

 私もそう思っています。

堀江 宇宙旅行用のカプセルって、どうなんでしょう。なかなか研究としては認められないんですか。

 でも、今後、本当にスペースツアーや移住計画などが実現できるようになると、この部分を考えていく必要がありますよね。

堀江 人工冬眠は、例えば寿命にはどんな影響を及ぼしそうですか?

 私は個人的には寿命は延長するんじゃないかと思っています。

堀江 それは老化が止まるということですか?

辻 はい。冬眠中は細胞分裂もできないので、体全体が休んでいる休眠状態です。じゃあ、「冬眠動物は年をとらないのか」っていう話になりますけど、彼らはずっと冬眠しているわけではなく、「寝て起きて」「寝て起きて」を繰り返すので、起きている時に老化しているんじゃないかと。だから、本当は冬眠の前後で老化したかどうかを調べたほうがいいんです、ですがあんまりそういう研究はされてないですよね。

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Photograph/Edit=柚木大介 Text=村上隆保

辻孝(Takashi Tsuji)

理化学研究所多細胞システム形成研究センター器官誘導研究チームリーダー。1962年生まれ。岐阜県出身。新潟大学、新潟大学大学院、九州大学大学院を卒業後、日本たばこ産業研究員を経て、2001年に東京理科大学助教授。2007年に東京理科大学教授。2014年から現職に。京理科大学客員教授、東京歯科大学客員教授、九州大学非常勤講師。