堀江貴文氏は4月23日、芝浦工業大学の山西陽子氏(当時)を取材。世界が注目する研究について話を聞いた。(初回配信日:2015年4月27日)
研究成果は世界中に広がり、米や中国からの問合せもある
堀江 いやあ〜、ものすごく詳しい説明ありがとうございます。
山西 すみません(笑)。どこかで止められるかなと思ったんですけど、どこで止めていいのかわからなくて、とりあえず一通り話しちゃいました(笑)。
堀江 それにしても、針なし注射器は利用できる範囲が広いなあ。ところで先生は、もとはどちらの大学にいらしたんですか?
山西 東北大学に4年、その後に名古屋大学に3年いて、芝浦工業大学に来たのが2年前です。ポスドク(博士研究員)ってけっこう不安定なので、パーマネントになるまでは研究室をウロウロしちゃいますね。
堀江 僕にはその仕組みがいまいち理解できないんですよ。そもそも研究の成果って、誰がどうやって判断するんですか?
山西 日本では論文の数で判断されることが多いですね。あとは研究費をどれだけ持ってきているかとか……。
堀江 山西先生はどこから研究費を持ってくるんですか?
山西 私は主に科学技術振興機構(JST)の、個人型の研究プロジェクトからです。
堀江 そこからもらえる研究費は、ぶっちゃけ、どれくらいなんですか?
山西 個人型の場合は、3年半で4000万円くらいです。若手の研究者が学会に行ったり、共同研究するための費用としては十分なんですが、研究室で学生を持ったりしているとかなり厳しい金額です。
堀江 素朴な疑問なんですが、こうした山西先生の研究成果はどこが使うんですか?
山西 使うとなると、特許をとって、どこかの企業と一緒になるような形ですね。でも、この技術はまだ原理を確認できた段階なので、臨床試験にも全然至っていません。特許は申請していますが、企業の方と一緒に話を進めていくのは、その次の段階ですね。
堀江 じゃあ、かなり新しい技術だということですね。
山西 はい、かなり新しいです(笑)。もうちょっと実験してから出した方がよかったかもしれません。実は、「ちょっと早く出しすぎたかもしれない」と後悔しているんですよ。1年くらい待った方がよかったんじゃないかと……。
堀江 「待った方がいい」っていう考え方は、捨てた方がいいと思いますよ。
山西 捨てた方がいいんですか?
堀江 こういうのは競争だし、発表するとその情報は、一瞬で世界中に伝わって世界中が注目するようになりますよね。
山西 そうですね。世界中に広がりました。今、アメリカや中国からメールがたくさん来ています。
堀江 今、世の中は、それぐらいグローバルになっているんですよ。当然、同じような研究や追試をやるところも多いでしょ?
山西 そうなんです。だから焦っています。
堀江 そこはパワープレイをやるしかないんですよ。もし、「何十億かけてその研究をやりましょう」という企業などがでてきたら、絶対に一緒にやるべきです。お金をかけて人をたくさん雇って、研究を加速させて実用化まで持っていくことが必要です。
山西 そうですよね。
山西陽子(Yoko Yamanishi)
芝浦工業大学工学部機械工学科 准教授(当時)。2003年ロンドン大学インペリアルカレッジ機械工学科熱流体専攻Ph.Dコース終了。東北大学大学院工学研究科バイオロボティクス専攻 助教、名古屋大学大学院工学研究科マイクロ・ナノシステム工学専攻 准教授を経て、2013年より芝浦工業大学工学部にて准教授となり、山西研究室を開設する。科学技術振興機構の研究推進事業さきがけの兼任研究員。