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「ハイパーカミオカンデが完成すれば、宇宙のメカニズムが解明できるかもしれない」 【梶田隆章が語る宇宙研究の現在と未来とは?その3】

堀江貴文氏は9月1日、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章氏を取材。「宇宙研究」の現在と未来などについて話を聞いた。(初回配信日:2014年9月4日)

ダークエネルギーを解明すると、宇宙がどう進化するかがわかる

堀江 話が少し戻りますけど、重力波の実験装置を使って、これから得られる成果というのは何なんですか?

梶田 天文学というのは、我々の目に見える可視光での観測から始まり、波長の長い赤外線や電波に移って新たな発見がありました。また、一方では波長の短いX線などでまた新しい発見があった。重力波は、こうした波長の軸とはまったく違い、電磁波では見えない宇宙、ブラックホールが関わる宇宙などを見ようということなんです。

堀江 その先に何が考えられますか?

梶田 重力波というのは、物質が激しく動けば生まれるわけですが、宇宙誕生の瞬間というのはものすごくエネルギーの高い世界で、そこでも生まれたはずだという考えがあり、宇宙誕生直後のインフレーションの時に生まれた重力波を直接見たいという夢があります。

堀江 それは宇宙マイクロ波背景放射と同じように重力波も観測されるはずだということですか?

梶田 そうです。

堀江 たとえば、宇宙空間に実験装置を作ったら、もっと感度がよくなりそうですよね。

梶田 そういうアイデアはすでにあって、世界的には開発研究もやっています。

堀江 時空が生まれて、時間という概念が生まれてくるので、宇宙誕生以前は時間がないわけですよね。時間がない世界。無に近いですよね。無からいろいろなものが生まれてくるっていうのは、不思議な話ですね。今後、この世界はどうなっていくんでしょうね。

梶田 ひとつの大きなポイントは、やはりダークエネルギーだと思います。ダークエネルギーが今も残っていて、宇宙の膨張が加速していく。どのくらい先の未来かはわかりませんが、宇宙にあるものはみんな隣りが見えないという世界になっていくでしょう。

堀江 物質同士が相互作用しなくなると。

梶田 そういうイメージですかね。

堀江 そうなるとどんな世界になるんですか?

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梶田 イメージとしては、我々の銀河は固まっているかもしれませんが、銀河以外のものは何も見えないとか。そして、星は年老いて超新星爆発して、また新しい星が生まれるのですが、星の燃えカスや中性子星、ブラックホールなどが増えてくるので、中性子星やブラックホールがだんだん増える銀河になっていくんじゃないでしょうか。

堀江 最終的には?

梶田 最終的には、今、どこの銀河でも中心にあるブラックホールがものを吸い込み続けるでしょうから、ブラックホール以外にない世界になるんでしょうかね。わかりませんけど……。

堀江 最終的にはそうなる可能性もあると……。

梶田 ただ、それも単純すぎる気がするんです。ブラックホールは、ものを吸い込みつつも、実はその一部をものすごい高エネルギーで解放しているんです。それが、たとえば宇宙線の元のようなものになっているので、そのように逃げて行く物質もあります。ですので、全部、ブラックホールになるというのも単純すぎるような気もします。

堀江 銀河にしても、周辺にある物質というのは、重力圏から離れていくんですよね。そうすると真っ暗闇の世界になる……。

梶田 今後の進化は、ダークエネルギーによって変わると思います。ダークエネルギーの性質自体がまだわかっていないので、性質の解明が進むとともにどういう進化をするかということがよりわかってくるはずです。

堀江 ダークエネルギーという概念自体がよくわかっていないんですが。どういうふうに考えればいいんですか?

梶田 僕もよくわかっていないんですけど(笑)。基本的には、銀河どおしがだんだん加速度的に離れていく加速膨張の世界ということです。たとえば、ボールを上に投げたら重力で戻ってきますが、これが上に投げた途端、どんどん加速していき、どこかに消えていくという世界です。今までは予想もしていなかった、相当、不思議なことが起こっているんですけど、詳しいことはあまりよくわかっていないんです。

堀江 それをひとつひとつ解明していくんですね。

梶田 そうですね。

その4に続く

梶田隆章(Takaaki Kajita)
理学博士、東京大学宇宙線研究所所長。
1959年生まれ。1986年東京大学大学院博士課程卒業後、東京大学理学部助手を経て、1999年東京大学宇宙線研究所教授に。その後、2008年同研究所所長に就任。ブルーノ・ロッシ賞、米・バノフスキー賞など数々の科学賞を受賞。ノーベル物理学賞にもっとも近い日本人のひとりとも言われている。