堀江貴文氏は、国立研究開発法人理化学研究所生命機能科学研究センター所属の柳澤吉紀氏と山崎俊夫氏から、“永久電流技術”の詳細や想定する活用事例について話を聞いた。(取材:2021年11月)
一番難しい技術・“高温超電導接合”とは
堀江 今回、一番すごい技術というのはなんですか?
柳澤 高温超電導の線材はすでにできていますので、一番難しいのはその高温超電導の線材と線材をつなぐ技術です。この高温超電導線材は実は金属ではなく、工業材料としてはセラミックスの仲間です。それをつなげるというのは、例えるなら、一度焼き固めた陶器のお茶碗同士をくっつけるようなもの。10年くらい前までは専門家の間でも「高温超電導接合は不可能だろう」と言われていました。しかし我々 (住友電工との共同研究グループ)は、それを実現したんです。
堀江 要するに接合する技術が新しいということですよね。
柳澤 そうですね。
堀江 だから、まだ高温超電導の技術はリニアモーターカーとかには使われていないんだ。じゃあ、今回開発された接合技術がブレイクスルーになるかもしれないですよね。
柳澤 そうなるかもしれません 。しかも、超電導回路 にスイッチ機能を持たせることで、外部から電流を供給することができるんです。
堀江 なるほど。1回、外部から電流を流してあげると、中でずっと電流が流れ続けるわけだ。
柳澤 そうです。電気抵抗がないので、冷やしている間はずっと電流が流れ続けます。これが永久電流技術です。
堀江 高温超伝導の接合技術が、今回、確立できたということですが、低温超電導の線材を接合する技術は、もうすでに確立しているわけですよね。それはどういう技術なんですか?
柳澤 いくつか方法があるんですが、多くは“はんだ”でつないでいます。
堀江 はんだでつないでるんだ(笑)。
柳澤 実は、はんだって超伝導物質なんですよ。種類にもよるんですが、低温超電導の線材はニオブチタンなどの金属なので、はんだを使うときれいにくっつくんです。しかし、高温超電導線材はセラミックなので、はんだではつかない。はんだでお茶碗はくっつきませんよね。
堀江 はい。
柳澤 だから、はんだで無理やりくっつけても、とんでもない大きな電気抵抗が出てしまうんです。
堀江 そうか。だからさっき、高温超電導の技術は、お茶碗とお茶碗をくっつけるような技術だと言ったんですね。
柳澤 そうです。
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柳澤吉紀
国立研究開発法人理化学研究所生命機能科学研究センター・機能性超高磁場マグネット技術研究ユニット・ユニットリーダー
山崎俊夫
国立研究開発法人理化学研究所生命機能科学研究センター・構造NMR技術研究ユニット・ユニットリーダー