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「宇宙の始まり」「人間はなぜ存在するのか」を研究【 「Kavli IPMU」村山斉が語る 宇宙研究の最先端とは?その2】

堀江貴文氏は5月4日、Kavli IPMU機構長(当時)の村山斉氏を取材。「宇宙研究」の最先端などについて話を聞いた。(初回配信日:2015年5月4日)

ダークマターは、このへんをビュンビュン飛んでいるはず

村山 そして、これから一番やりたい研究がダークマターの正体を明らかにすること。ダークマターというと“ダーク”だからすごく悪いもののように感じますが、本当はすごくいいやつで我々の産みの親なんです(笑)。どういうことかというと、さっきのインフレーションの話の中で、宇宙には濃いところと薄いところができたと言いましたけれど、何が濃くて何が薄いかというと、それがダークマターなんです。ただし、ダークマターは、まだ正体不明で誰も出会ったことのない不思議な物質なんですね。

堀江 このへん(自分の周り)にもあるかもしれないんですよね。

村山 そう。このへんをビュンビュン飛んでるはずなんです。それで、ダークマターは重力が強いので周りのものを引っ張り込む。そして、濃くなるともっと重力が強くなるから、さらに引っ張り込む。そのように、どんどん濃さが成長していくんです。

堀江 それが宇宙の最初のきっかけだったんですよね。

村山 そうなんですよ。ダークマターがないと集まろうにも集まれないから、星も銀河もできない。

堀江 ダークマターの存在は、どうやって導き出したんでしたっけ?

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村山 最初は観測なんですよ。1930年代のことなので、あまり観測の技術は良くなかったんですが、その時代でも銀河団の中にある銀河ひとつひとつがとても速く動いていることは観測でわかった。すると、ただ銀河だけが集まっている集団(銀河団)であれば、たいした重力がないわけだから100億年以上も銀河団を維持することはできないはずだ。ということは銀河を束ねていられるだけの“何か”があるのだろうということになったんです。

堀江 そんな昔なんですね。

村山 ええ。それから、今度は1960年代なんですけれども、銀河の中の星の運動が観測できるようになると、銀河の中にも星がたくさんあってグルグルと回っているけれども、それがバラバラにならないのは、つなぎとめておくだけの重力を作る何か見えないものがあるはずだ、と。そこで初めて理論と結びつくわけです。

堀江 そんな最近なんですか?

村山 はい。でも、それが確立して定説になりかかったのは、1980年代くらいですよ。そして、今世紀になって「ダークマターは、私たちを作っている原子とは違う物質だ」ということが確立したんです。正体を調べれば調べるほど、「あれでもない」「これでもない」ということになって、もう候補がなくなっちゃったから。

堀江 原子ではないんですか?

村山 原子でもない。ブラックホールでもない……。これまで、我々、素粒子物理学者は、身の回りにあるものをとことん突き詰めていって、何でできているかがわかれば宇宙のことが全部わかると信じてやってきたんですけれども、それが、「あれ、俺たち何やってきたんだろう?」っていうことになっちゃった。

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その3に続く

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Photograph/Edit=柚木大介 Text=村上隆保

村山斉(Hitoshi Murayama
物理学者(専門は素粒子理論、初期宇宙論)「東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構」 機構長、特任教授。「米国カリフォルニア大学バークレー校」物理学科MacAdams冠教授。(※当時)
1964年生まれ。東京都出身。1991年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。その後、ローレンス・バークレー国立研究所研究員などを経て、2000年カリフォルニア大学バークレー校物理学科教授に就任。2007年「Kavli IPMU」機構長兼務。著書に『宇宙は何でできているのか』(幻冬舎新書)など。