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「受託開発」の次に、何を積み上げるか―株式会社アクトが示す“第二の柱”の現在地

中小企業の経営環境は、ここ数年で明らかに変わった。人手不足とコスト高騰が常態化し、「既存事業だけで回す」モデルが限界に近づいている。受託開発を主力としてきた企業にとっても例外ではない。案件の波に収益が左右される一方で、固定費は上がり、採用も難しい。結果として、多くの経営者が「ストック収益を生む第二の柱」を必要としている。

株式会社アクト(本社:東京都文京区、代表取締役CEO:小林智彦)が、freee主催の経営者向けオフラインイベントに登壇し、「受託開発を活かし自社サービス=ストック収益を作る」ことをテーマに語るという発表は、この問いに真正面から向き合う動きである。

本記事は、同社が公表した複数の発表資料をもとに、事実関係の確認を行いながら編集部視点で再構成したものである。

「第二の柱」は理屈ではなく、現場の制約から始まる

「第二の柱」論には、華やかな成功談がつきまとう。しかし現実は、失敗できない資金繰り、限られた人員、既存顧客対応の重さといった“制約”の束である。アクトが今回、船井総合研究所とともに「人・カネ・組織」のリアルを語るとした点は、きれいごとではなく、経営の摩擦そのものを扱う姿勢を示している。

注目すべきは、受託開発を「捨てる対象」とせず、「活かす資源」として扱っている点である。受託で培った顧客接点、運用経験、業務理解は、サービス化における重要な足場になる。だが同時に、受託の慣性は新規事業を食い潰す危険もある。既存の“勝ちパターン”を抱えたまま、どうやって別の収益構造へ移るのか。今回の登壇は、その移行の実務面に焦点を当てている。

アクトの転換点は「サイバーセキュリティ」を柱に据えたこと

アクトは、創業以来のITソリューション提供という軸を持ちながら、サイバーセキュリティ支援を成長の中核に据えてきたと説明している。ここで重要なのは、「セキュリティを扱う」こと自体よりも、それを“第二の柱”として成立させる設計である。

2025年には、経済産業省が定める「スマートSMEサポーター(情報処理支援機関)」として認定された旨を発表している。中小企業がIT導入で迷いやすい構造に対し、導入支援と相談の受け皿を提供する位置づけである。また同年には、新サービス「WebセキュリティPlus」の提供開始も公表している。改ざん、マルウェア、フィッシングなどの脅威に対し、検知・防御・復旧支援を含む“トータル”をうたい、料金や提供形態も明示している。

これらは単発のニュースではない。中小企業にとってセキュリティは「重要だが後回しにされやすい」領域である。そこに対し、導入のしやすさ、運用の代替、相談の窓口という“継続の設計”を置くことで、ストック型の関係性を作ろうとしている構図が見える。

認知の壁をどう越えるか:ZEROICHI×ホリエモンチャンネルの意味

セキュリティは、必要性が高いほど「よく分からないもの」として敬遠される。つまり最大の敵は、技術ではなく認知である。
アクトが過去に「ZEROICHI×ホリエモンチャンネル」で取り上げられている事実は、この認知の壁に正面から向き合った痕跡である。

実際、ZEROICHIに掲載された同企画では、サイバー攻撃の現実や企業の知識不足といった論点に加え、啓蒙を“企画化”し、入口を作る発想が議論されている。
エンタメ化は軽さではない。難解領域を社会に接続するための翻訳である。セキュリティの市場が成熟しない背景には、「必要性の理解」と「行動の開始」に断絶がある。そこを埋める導線設計は、第二の柱を作る上で欠かせない。

「信頼」をどう積むか:堀江編集長との共著が示すもの

もう一つの転換点は、信頼の積み上げ方である。アクトは、堀江貴文氏(ホリエモン)と小林智彦氏の共著『どうしたらサイバー攻撃から企業を守れるのか』を発売する旨を発表している。
ここでのポイントは、書籍そのものの話ではない。セキュリティという“見えない価値”を扱う事業において、意思決定者が最終的に依拠するのは「この相手は信用できるか」である。共著は、その信用を社会に可視化する一手になり得る。

加えて、同リリースでは共著の背景として、ホリエモンチャンネルでの対談がきっかけとなった旨も説明されている。露出が点ではなく線になり、認知→理解→信頼という階段を作ろうとしている構図がここでも読み取れる。

アクトの現在地:受託の延長ではなく「運用のインフラ」へ

ここまでの発表を編集部視点で束ねると、アクトの現在地は「受託開発からの転換」というより、「運用を代替するインフラ」へ寄っている。
セキュリティは導入して終わりではない。監視、判断、初動、復旧まで含めた運用が本体である。しかし中小企業は、その運用人材を社内に抱えにくい。そこに対して、監視や支援を含むサービスとして提供する発想は、経営のボトルネックを直接ほどく。

そして、その“ほどき方”を、セミナーという形で他の経営者に開示する点が重要である。第二の柱は、結果だけを見せても再現されない。制約と試行錯誤のプロセスに価値がある。今回の登壇は、同社の成長物語というより、中小企業の経営が直面する現実に対する一つの設計図として読むべきである。

企業概要

会社名:株式会社アクト
代表者:代表取締役CEO 小林 智彦
所在地:(本社) 東京都文京区小石川1-3-25 小石川大国ビル6階
設 立:1994年11月11日
資本金:1,000万円
事業内容:サイバーセキュリティ事業、システム開発、導入支援
WEBサイト:https://act1.co.jp

ZEROICHI編集部の注目点

「第二の柱」を掲げる企業は多いが、実装の話になると途端に曖昧になる。
アクトの発表群には、①制度・認定による立ち位置の確保、②新サービスでの提供範囲と価格の明示、③認知の壁を越える露出設計、④信頼を可視化する共著、といった“積み上げの部材”が揃っている。

つまり、これは「受託から自社サービスへ」という一般論ではなく、リソース制約の大きい中小企業が、どうやってストック収益と信頼を同時に組み上げるかという、再現可能性のある現場論である。
その意味でアクトは、第二の柱を“語っている”のではなく、“組み上げ始めている”段階にいる。そこに、いま記録する価値があると判断した。

■原文リリース(参照)

※本記事は、原文から一部編集・要約して掲載している。誤解や偏りが生じる可能性のある表現については、原文の意味を損なわない範囲で調整している。

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