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嗅覚を「人工」で再現できない理由【理学博士・広津崇亮が語る がん検査の未来とは? その2】

堀江貴文氏は10月10日、理学博士の広津崇亮氏を取材。がん検査の未来について話を聞いた。人工的に「匂いセンサー」で作り出すのが難しい理由とは何か?(初回配信日:2017年10月10日)

機械はたくさんの匂いの中から、ひとつの物質の匂いを感知することができない

堀江 その受容体は、どういった物質を感知しているんですか? 例えば硫化水素みたいなものなのか、もっと分子量の多い有機物なのか。

広津 それが、あまりカテゴライズされていないんですよ。硫化水素に反応する受容体もあれば、高分子有機化合物である炭素鎖の数で反応する受容体もあります。

堀江 炭素鎖の数に反応するのは、何か意味があるんですか?

広津 おそらく、「餌か餌ではないか」「好きか嫌いか」以外にも様々な情報を得ているのだと思います。

堀江 うーん。じゃあ、例えば「匂いセンサー」みたいなものを作ろうとしたら、どういうアプローチが考えられますか?

広津 受容体を何かのデバイスに埋め込んでいくということは考えられますが、人工匂いセンサーを作るのは、今は難しいと思います。

堀江 それはなんでですか?

広津 理由は、嗅覚は「微量の物質を検知する精度(=感度)」と、「たくさんの匂いの中からひとつの物質だけを検知する選択性」が必要なんですが、機械では感度を高めることは可能かもしれませんが、選択性が保てないんです。ノイズも一緒に拾ってしまう。嗅覚のすごいところは「たくさんある匂いの中から、すごく微量な物質をひとつだけ識別できる」ということです、これをセンサーでやるのは、かなり難しい。

堀江 生体模倣的なアプローチはできないんですか?

広津 生体模倣がほぼ不可能というのが嗅覚なんです。

堀江 逆に、なんで生体はできているんですか?

広津 それが、100%わかっていないんです。

その3に続く

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Photograph/Edit=柚木大介 Text=村上隆保

広津 崇亮(Takaaki Hirotsu
博士(理学)、株式会社HIROTSUバイオサイエンス代表取締役 1972年4月25日、山口県生まれ。東京大学大学院博士課程終了後、日本学術振興会特別研究員、京都大学大学院研究員などを経て、2016年に株式会社HIROTSUバイオサイエンスを設立し代表に。