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「肉には脂の美味しさと、水溶性成分の美味しさがある」 【新潟大学・藤村忍准教授が語る、リジンで作るおいしい肉とは?その3】

堀江貴文氏は1月27日、新潟大学の藤村忍氏を取材。「リジン」で作る肉などについて話を聞いた。(初回配信日:2016年2月4日)

タンパク源を減らし、体重も落とさず、味を良くする方法も見つけました

藤村 はい。ところが、この研究の過程でちょっと気になることが起きまして……。

堀江 何ですか?

藤村 リジンを増やすことでグルタミン酸が増えるんですが、イミダゾールジペプチドという健康成分が減ってしまうんです。

堀江 イミダゾールジペプチドって、元気が出るやつですよね。

藤村 はい、疲れが取れるんですよ。イミダゾールペプチドの成分はカルノシンとアンセリンなんですが、リジンを増やすとカルノシンがほんの少しだけ減るんです。致命的なことではないんですが、私はここが気に食わなくて……。なんとかカルノシンの量を増やせないかと思って、さらに研究しました。

堀江 なるほど。

藤村 カルノシンもアミノ酸からできているので、今度はヒスチジンというアミノ酸を増やすと、カルノシンやアンセリンが増やせることがわかってきたんです。

堀江 へー。

藤村 こういった健康成分も、アミノ酸の量を何%か増減させることで調整できそうだという展開がでてきたわけです。そしてある時、逆にリジンを減らしたらどうなるかという実験をしてみたんです。すると、0.1%だけリジンを減らしたほうがグルタミン酸が増えるという驚きの結果が出たんですよ!

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堀江 えー! それは、どういうメカニズムなんですか?

藤村 簡単に言うと、タンパク質の合成が少し落ちて、分解が微妙に増すことによって、アミノ酸が余るんです。

堀江 へー。

藤村 アミノ酸だけでなく、クエン酸や他にもいろいろな成分が軒並み増えました。最初は「ありえない!」と思って何度も何度も反復実験をしたんですが、いつも同じ結果がでました。

堀江 すごいですね。

藤村 味でいうとうま味系と甘味系、あとは苦味系の成分がちょっと増えたんです。苦味系がちょっと増えると、コク味とか後味が感じられるようになるんですよ。つまり、いろいろな味わいが増したということです。

堀江 与えるリジンの量を減らすには、具体的にはどうするんですか?

藤村 飼料のタンパク源をちょっと減らします。

堀江 なるほど。

藤村 タンパク源を減らすので、本来ならば成長が少し落ちてしまいます。これは、従来の“食肉の生産効率を高める”という考え方からするとネガティブな方法です。しかし、リジンを与える日数をうまくコントロールすることで、体重を落とさず味も良くする方法を見つけたんです。

その4に続く

藤村忍 Shinobu Fujimura

博士(学術)、新潟大学農学部准教授 (当時)。 1966年生まれ。秋田県出身。1995年、新潟大学大学院修了後、秋田県庁に入庁。1996年、新潟大学農学部助手となる。2002年に准教授に。2008年から新潟大学地域連携フードサイエンスセンター事務局長に就任。「肉のおいしさ」が主な研究テーマ。