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「ハイパーカミオカンデが完成すれば、宇宙のメカニズムが解明できるかもしれない」 【梶田隆章が語る宇宙研究の現在と未来とは?その2】

堀江貴文氏は9月1日、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章氏を取材。「宇宙研究」の現在と未来などについて話を聞いた。(初回配信日:2014年9月1日)

ニュートリノは長い距離を飛んでるうち、別のニュートリノに変化した

梶田 スーパーカミオカンデで毎日観測しているのは、太陽から来るニュートリノです。あとは、地球の大気上に宇宙線が飛び込んできて、いろいろな素粒子や中間子などを作るんですが、それが壊れた時にニュートリノができるので、それも毎日観測しています。合わせて1日にだいたい25〜30くらいですね。スーパーカミオカンデは18年くらい観測を続けているんですけれど、一番大きな成果は“ニュートリノが長い距離を飛んでいるうちに別のニュートリノになることを発見した”ことなんです。

堀江 なんで変わるんですか?

梶田 ニュートリノに重さがあるからです。アインシュタインの相対性理論でいうと、重さがなければ光のスピードで飛ぶわけです。そうすると時間は進まないので状態は絶対に変わらないはずです。しかし、状態が変わるということは、光のスピードよりも遅く飛んでいるということです。だから重さがあるということです。

堀江 ヒッグス粒子(編集部注:質量を与える粒子)との相互作用はあるんですか?

梶田 ヒッグス粒子が他の素粒子に質量を与えているのと同じように直接、ニュートリノの質量を与えたと考えると、ニュートリノの質量はあまりにも軽すぎるんです。ですので、たぶん別のメカニズムがあると考えています。

堀江 それは、簡単にいうとどういうことですか?

梶田 簡単に言うと、我々に見えているニュートリノは非常に軽いんです。そこで、ニュートリノには兄弟みたいな重いニュートリノがあるはずだと。その兄弟のニュートリノがあまりにも重いがゆえに、今見えているニュートリノが軽くなっているのではないかというような説明です。

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堀江 それは、ダークマターの有力物質みたいなものなんですか?

梶田 違います。ダークマターは宇宙が生まれた時に作られて、それがずっと壊れずに生き残っていると思われているんですけれども、そのニュートリノの兄弟のとんでもなく重いやつは、すぐに壊れただろうと思われていて、今のこの宇宙には残っていない。

堀江 今はない、と。

梶田 ないです。この宇宙には現在、基本的に物質しかないですよね。反物質はありません。これはビッグバンを考えるとものすごく不思議なことで、中身がグチャグチャの熱いスープがあって、その時には物質と反物質が基本的には同じ数であったのが、冷えていったら物質だけがちょっと残っているという状態なんです。おそらく、この物質が生まれた理由というのが、このニュートリノの兄弟のすごく重いやつの性質に関係しているんじゃないかと。

堀江 じゃあ、素粒子の10億分の9億9999万ぐらいのやつが、そのなくなったニュートリノみたいな感じなんですか?

梶田 わかりやすくいうと、ニュートリノが他の素粒子より10億倍軽いと言った時、その兄弟は10億倍重い。

堀江 なるほど。イメージ的に言うと10億×10億分の1だ。

梶田 そうですね。

堀江 ダークマターとかダークエネルギーと言われるものは、ニュートリノとは別の物質なんですか?

梶田 そうですね。

堀江 具体的には?

梶田 ダークマターは、「ダークマターがある」「軽くない」「電気を持っていない」「ふつうの物質じゃない」ことぐらいしかわかっていないんです。宇宙がビッグバンで生まれて、よくわからないけど、そのまま長寿命で残っている。

堀江 それは素粒子的なものですか?

梶田 素粒子的なものだと思っています。

堀江 でも、他の物質と相互作用はしない。

梶田 おそらく、ニュートリノよりはしないでしょう。

(編集部注:宇宙の中で人間が観測できている陽子や中性子などの物質は、全体の約4%にすぎないと言われている。その5〜6倍の約23%が「ダークマター」といわれる“未知の物質”で、残りの73%が「ダークエネルギー」と呼ばれる“正体不明”のもの/「XMASS」のサイトhttp://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/xmass/darkmatter.html参照)

その3に続く

梶田隆章(Takaaki Kajita)
理学博士、東京大学宇宙線研究所所長。
1959年生まれ。1986年東京大学大学院博士課程卒業後、東京大学理学部助手を経て、1999年東京大学宇宙線研究所教授に。その後、2008年同研究所所長に就任。ブルーノ・ロッシ賞、米・バノフスキー賞など数々の科学賞を受賞。ノーベル物理学賞にもっとも近い日本人のひとりとも言われている。