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「自然に充電される」「漂う電波を使う」 【東大・川原圭博の考える新時代の給電システムとは?その3】

堀江貴文氏は8月18日、東京大学の川原圭博氏を取材。「給電システム」の未来などについて話を聞いた。(初回配信日:2014年8月21日)

環境に漂っている電波を利用する

川原 それから、さっきの送電線の話じゃないですけど、環境に漂ってる電波をつかまえてエネルギーに代えてコンピュータを動かすっていうのをやっています。

堀江 僕、それに興味があるんですよね。

川原 何でそんなことをやってるかというと、昨年の10月まで、アメリカに2年間留学させてもらっていたんですよ。アメリカの畑って、半径が500mとか1kmとかのすごく大きな円型をしてるんですよね。なんで丸いかっていうと……。

堀江 スプリンクラーのためですよね。

川原 そうです。このスプリンクラーがかなりおバカな仕様になっていて、植物があってもなくて、水はけが良くても悪くてもそういったことに関係なく一様に水をやってしまう。だから、畑の30%くらいにはムダに水をまいているんです。畑がどれくらい湿っているかがわかるセンサーは、あることはあるんですが1台40万円くらいする。そこで「これじゃあ、いかん。高すぎる」っていうことで、1個1000円くらいの使い捨てできるようなセンサーを作りましょうということになったんです。

堀江 この家庭用プリンタで作った回路がアンテナにもなるんですか。

川原 そうですね。実は環境に漂っている電波をつかまえて、電気エネルギーに代えるというのはそんなに難しいことではなくて、電波が飛んでいればアンテナを置いておくだけでアンテナは電波を電流に変えてくれるんです。ただ、飛んでいる量はそんなに多くありません。なのでまとまった量を一度に引き出せる電池と違って、ジワジワ貯めて上手く使う工夫が必要になります。家の中で一番強い電磁波が漏れてるのは電子レンジなんですけど、レンジをオンにして数秒するとこの回路が充電され、温度計や湿度計が電池なしで動き始めます。また電源を切ってもしばらくは貯まったエネルギーで動き続けます。量でいうとボタン電池の代わりぐらいにはなりますかね。

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堀江 すごいですね。

川原 他の周波数帯、たとえば地デジの周波数帯(470MHz〜770MHz)は道が開けていてビルにブロックされていないようなところだとわりと電波が届いています。携帯電話の周波数帯(800MHz〜2.5GHz)も地下鉄の駅の出入口とか、JRの山手線の駅とか、多勢の人が携帯を使ってるようなところだと強い電波になっています。

堀江 そういうのって、デジタルサイネージとかで使えないんですかね。

川原 う〜ん、何かを光らせるっていうのは、けっこうエネルギーを食うので、工夫は必要そうですね。ただ、何かを測定してデータを無線で送るくらいなら余裕でできちゃいますね。

MITと共同開発している折り紙ロボットプロジェクト

堀江 僕、宇宙開発でちょうど制御系のプリント基盤とかを外注しているんですよ。これで作ったほうが全然いいですね。

川原 宇宙にそのまま持っていくのは勇気がいるんですけど、でも宇宙関係の人たちとも一緒に研究をしていて、展開図のまま宇宙空間に持って行って、そこで折り上げていろんな回路にしようっていうプロジェクトがあります。

堀江 展開図のまま持って行く?

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Photograph=柚木大介 Text/Edit=村上隆保

川原圭博(Yoshihiro Kawahara)
東京大学大学院情報理工学系准教授(当時)。2000年、東京大学工学部電子情報工学科卒業。2005年、東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。その後、大学院情報理工学系研究助手、助教を経て、2013年准教授に。2011から2013年まで、ジョージア工科大学客員研究員及びマサチューセッツ工科大学「Media Lab」の客員教員を兼任した。